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働く 田園 観光

2025/12/25

日本酒を仕事にしたい。未経験からの転職は可能?長岡の酒蔵で聞いた働き方のリアル

「日本酒が好きで、いつか仕事にしてみたい」

そう考えたとき、どんな働き方が思い浮かぶでしょうか?

酒蔵で酒造りを行う「蔵人(くらびと)」はもちろん、消費者に魅力を伝える「販売・広報」、そして近年注目の「海外展開」など、日本酒に関わる仕事の選択肢は広がっています。

しかし、実際に移住しての転職や就職を考えたとき、「未経験でも通用するのか」「特別な資格やスキルは必要なのか」といった現場の実情は、求人サイトを眺めるだけでは見えてきません。

今回は、そんな「日本酒の仕事のリアル」を自分の目で確かめるため、長岡市移住相談センターのオーダーメイドツアーに参加したご夫婦に密着。

「全ての工程に関わる小規模蔵」と「データ醸造を進める中規模蔵」。

タイプの異なる2つの酒蔵を巡り、現場で働く先輩たちに聞いた“仕事の本音”を徹底レポートします。

「人と繋がる」オーダーメイド型移住体験ツアーとは?

長岡市移住定住相談センターが企画する「ながおかの人に会いにいこうツアー」は、参加者一人ひとりの興味に合わせて内容をカスタマイズできるのが特徴。

参加前にオンラインでヒアリングを行い、「どんな人と会いたいか」「どんな暮らしをしてみたいか」などを丁寧に聞き取り、長岡の人や場所をつなげてくれます。

観光とは違い、“地域の人と関わる”ことを目的とした1日移住体験。

移住を考えるうえで欠かせない「リアルな長岡の暮らし」が、まるごと味わえるツアーです。

今回のツアー参加者「日本酒の酒蔵で働いてみたい!」

日本酒が大好きで、長岡にも何度も足を運んでいるという千葉県在住のSさんご夫妻。

旦那様は「いつか日本酒の酒蔵で働いてみたい」という思いをお持ちです。

しかし、移住フェアなどのイベントでは、どうしても「良い面」の話が中心になりがち。

酒蔵で働く厳しさや、未経験でも本当にやっていけるのかを知りたい。

そんな思いで、今回のツアーに参加されました。

【体験1】 道中は、交通事情やショッピングエリアをチェック

長岡駅でSさんご夫妻と合流後、さっそく移住相談員の運転で出発です。

車内はまさに「動く相談室」。

窓から見える景色一つひとつが、暮らしのヒントになります。

車を運転されないSさん(奥様)は、

「普段の買い物は、長岡駅周辺で。休日に、郊外のショッピングエリアに主人と一緒に買物に行くのがよいですね。」

と具体的に生活イメージを膨らませます。

通勤ラッシュを緩和するフェニックス大橋や、ショッピングエリアなど、地元民ならではの視点で「長岡の地図」を頭に入れながら移動すること約20分。

1軒目の目的地である「恩田酒造」に到着です。

【体験2】 恩田酒造・先輩移住者が語る「日本酒造り」の現在地

恩田酒造は、創業150年、社員数5名という小規模な酒蔵ですが、米づくりから精米、仕込み、販売まで一気通貫で行うというこだわりの酒造りを行っています。

自社栽培を行っている田んぼに囲まれた蔵で迎えてくれたのは、自身も大阪からの移住者でもある蔵人の坂東さん。

日本酒業界へ異業種からの転身、そして「学び」の場

実は坂東さん、もともとは大学で人文学科を専攻し、新卒でIT企業に入社したという経歴の持ち主。

「日本酒そのものというより、『発酵』というプロセスに関心があった。」

と語ります。Sさんが、

未経験で日本酒の世界に飛び込むことに不安はなかったのですか?

と聞くと、こんな回答が。

「新潟県には『新潟清酒学校』という場所があって、各酒蔵から推薦された若手が集まり、醸造の基礎科学や業界の法令を学べるんです。そこで他社の同期と繋がりができるのが大きいですね。日本酒業界は横のつながりが強く、技術を隠さずシェアしてみんなでよいお酒をつくろうという雰囲気があります。」

「届ける」までが酒造り

また、現在の日本酒業界に対する課題感と酒造りにかける想いも語ってくださいました。

「かつては酒税で国を支えたと言われる日本酒ですが、今のアルコール消費量全体に占める割合は約5%程度。しかもコアなファンが大量消費をして支えているのが現状です。だからこそ、もっと飲む場面や楽しみ方の選択肢を広げていきたいんです。」

「うちは小さい蔵なので、酒を造るだけでなく、瓶洗いから販売、配達まで全てに関われます。また、ECサイトを作ったり、クラウドファンティングに挑戦したりと、既存の業務の合間を縫って新しいことに挑戦しています。やりたいことたくさんあって大変ですが、やりがいのある仕事です。」

創業150年を迎える節目で入社されたということもあり、伝統的な酒造りを大事にしながらも、恩田酒造でしかできない特色ある酒造りに取り組む坂東さん。

日本酒ファンである、Sさん夫婦も真剣な眼差しで聞き入っていました。

【体験3】 「鮨・割烹 あぽろ」でランチしながら長岡案内

お昼は、恩田酒造からすぐ近くの地元人気店「鮨・割烹 あぽろ」へ。

名物の「鮨セット(醤油ラーメン付き)」という、ボリューム満点ランチをいただきます。

お腹が満たされ緊張がほぐれる中、相談員からは、長岡の地図を広げて、観光情報だけでなく、移住後の生活に欠かせない交通・買い物・エリアそれぞれの事情や、お得な制度などの情報をレクチャー。

食事を共にするなかで一歩踏み込んだ相談も飛び出すなど、Sさんご夫妻の不安一つひとつに丁寧にお答えしました。

【体験4】 柏露酒造・伝統の「大名蔵」で知る日本酒業界の働き方の進化

昼食後に訪れたのは、1751年(宝暦元年)創業の「柏露(はくろ)酒造」です。

1882年(明治15年)、長岡藩主・牧野家の酒造蔵を譲り受け、同家の家紋である「三つ柏」と「柏露」の名を継承したという、由緒正しき「大名蔵」です。

案内してくださったのは、蔵長の白原さん。

柏露酒造で一番の年長者であり、長年日本酒業界を見つめてきた方です。

蔵の中に足を踏み入れると、その歴史の重みとは対照的に、最新の設備が整然と並んでいることに驚かされます。

データはオープンに。「属人化しない」酒造り

柏露酒造の特徴は、蔵人の間で酒造りのデータを徹底的にオープンにしていること。

「見て盗め」という昔ながらの職人の世界ではなく、数値化されたデータや上手く行った取り組みを経験豊かなベテランと若手メンバーが共有し合うことで、高品質な酒造りを実現しています。

「データでの管理手法や設備を導入したことで、働き方も昔に比べて変わったと思います。昔は温度管理のために、昼夜問わず酒母や醪(もろみ)を2、3時間ごとにかき混ぜる作業が必要でしたが、今は機械化のおかげでだいぶ楽になりましたよ。毎年仕込みの状況によって変わってきますが、今年の年末年始は9連休も取れます(笑)」

と白原さん。

柔軟なキャリアステップとチャレンジを応援する社風

これまで首都圏向けの出荷が多かったことから、地元の方に酒蔵に親しんでもらおうと柏露酒造が2024年から開催しているのが「柏露酒造 蔵まつり 発酵フェス」。

若手蔵人が企画する限定酒をフェス限定でお披露目し、人気のあるものを実際に商品化するなど、若手の挑戦を後押しする取り組みを行っています。

自身も、仕込みだけではなく営業なども経験してきたという白原さんはこう言います。

「希望すれば広くキャリアを選択できる環境がある。合うか合わないかは、やってみないとわからないと思うので、まずはぜひ飛び込んできてほしい。」

この言葉は、Sさんが酒蔵で働くイメージを持つ上で大きな参考材料になったようです。

蔵ですれ違う社員の皆さんが「こんにちは!」と明るく挨拶してくれる雰囲気からも、風通しの良さが伝わってきました。

参加者の声:ツアーを終えて

1日で2つの酒蔵を巡り、働く人の生の声を聞いたSさんご夫妻。

帰り際にお話しいただいた感想を紹介します。

「恩田酒造の小規模な蔵の『全部やる面白さ』と、柏露酒造の『チームワーク』。酒蔵といっても働き方や雰囲気がこんなに違うのかと驚きました。社員さんと直接話せて、ネットでは分からない空気感を知れたのが本当に良かったです。」

とSさん(旦那様)。

奥様も、

「蔵人さんにこだわりのお話を聞けて、いつも飲んでいる日本酒がもっとより美味しく頂けそうです。」

と笑顔。

あなただけの「長岡のはじめ方」を見つけませんか?

今回のツアーのように、長岡市移住相談センターでは、皆さんの「知りたい」「会いたい」に合わせたオーダーメイドのツアーを企画しています。

  • 伝統産業の現場を見てみたい
  • 子育て・教育環境を知りたい
  • 先輩移住者とつながりたい
  • 雪国の暮らし方を体験してみたい

どんなご要望でも構いません。

観光案内ではなく、あなたの人生の選択肢を広げるための「出会い」をコーディネートします。

「長岡、ちょっと気になるかも」と思ったら、まずはオンライン相談から始めてみませんか?

私たちが、あなたの移住の第一歩を全力でサポートします!

我々、移住定住相談センターがご希望をうかがいます!
我々、移住定住相談センターがご希望をうかがいます!

この記事を書いた人

長岡市移住コンシェルジュ 中島はな
長岡市移住コンシェルジュ 中島はな
兵庫県姫路市出身。大学卒業後、外資系IT企業、新潟市の海運会社を経て2025年9月に長岡市地域おこし協力隊に着任。3度の飯とスウィングダンスが大好き。移住を期にスウィングダンス未踏の地・長岡でサークルを立ち上げ、ダンサー100人を目指して日々活動中。