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2023/8/10

わたしらしく輝く起業は、長岡での移住生活を変えるか?

こんにちは。移住ライターの榎本です。

前回は、移住者が作る小さなコミュニティの話題をご紹介しましたが、今回は小さな起業講座についてお話ししたいと思います。

これから移住を検討していて、さらに小さな起業に興味があるという方にぜひお読みいただきたいです。

そしてこの記事を読んだことで、自分自身で小さく何かを始めてみたい、または起業家のコミュニティやネットワークを作り始める方の後押しができれば嬉しいです。

きっかけは「月3万円ビジネス」

みなさんは、「月3万円ビジネス」という言葉を聞いたことがありますか。

地方へのUIターンや田舎暮らしが脚光を浴びていた2010年代に、藤村靖之さんという発明家が提唱した地方暮らしの実践的アイデアです。

「月3万円ビジネス」をはじめ、実践例を多数紹介した本がいくつか出版されました。

実際に藤村さんに弟子入りしたり、本を読んで実践された方もあるのではないでしょうか。

自分自身も、この本が出た数年後に手に取る機会がありました。

このときは面白いアイデアだな、というくらいの印象だったんですよね。

その後、長岡に移住することになり、隣県の山形県鶴岡市ですでに講座が開かれていることを知ります。

すぐさま視察の計画を立て、翌年には自身の担当事業として職場で提案しました。

月3万円稼げば成功!ではない起業講座

この月3万円ビジネス、ただの小銭稼ぎ、プチ副業ではないんです。

藤村さんの提唱した月3万円ビジネスの心得を長岡独自にアレンジし、以下のようにまとめました。

1)月3万円の利益を目標にしたスモールビジネスを起こす

2)自分のやりたい想いを大切にする

3)地域らしさ、地域にあるものを大切にする

4)仲間と分かち合う、つながりから生み出す

5)リスクと所要時間を減らし、知恵を絞る

6)楽しみながらやる!!

この6項目を見ていただければ分かると思いますが、稼げれば何をしてもいいというわけではないんです。

環境や社会など、自分とつながりのあるものに想いを馳せ、その中でできることを実践する。

しかも、なるべく多くの人と分かち合う、支え合う、そして自分らしく輝ける働き方をする。

それがこの小さな小さな起業講座の醍醐味なんです。

長岡版の月3万円ビジネスは、3つの「さん」を掛け合わせて「さんビズ」と名付けました。

それは、「山」=地域の資源を活かす、「3」=月3万円の利益を生む、そして「SUN」=わたしらしく輝く、の3つの言葉で、2016年から開講しています。

さんビズを最も必要としていたのは、自分自身だった

では、なぜ「さんビズ」を始めようと思ったのでしょうか。

長岡への移住前にはNPO職員として6年働き、長岡では公益法人の職員になりました。

そして、長岡でいずれは起業して働いてみたいとも考えていました。

ですが、周りには「さんビズ」のような小さな起業に興味のある仲間がなかなかいない。

相談できる人もいない。仕事の起こし方もよく分からない。起業セミナーは何となく敷居が高い。

ということで、まずは自分のような仲間が集まるコミュニティを作ってしまおう、と始めたのが「山の暮らしサロン」です。

そこに集まる人は、普通に長岡で暮らしているだけでは知り合えない人ばかり。

しかも、サロンのテーマによっては、深掘りして聞ける内容もたくさんあることが分かりました。

サロンを重ねていくうちに、自分のように小さく身の丈に合った起業をしてみたい、でも仲間がいないという方が一定数いることが分かりました。

これはもう、やってみるしかない。

やってみて受講生が集まらないなら、何か自分が考えている設定が間違っているはずなので、修正するかどうかは失敗してから考えよう。

そんな想いでまずは「さんビズ」を始めてみたのでした。

さんビズには移住者が集う

さんビズは、座学、実践、発表会を組み合わせた全6回の連続講座です。

受講生は、第8期を終えてのべ101名を超えました。

講座は主に長岡で開催しますが、希望があれば市外で開催したこともあります。

いったいどのような人が、さんビズを受講するのでしょうか。

2020年度に開講した第6期の面々。毎年、出身地・居住地が様々でバラエティ豊かな講座です。

地域おこし協力隊など外部からのUIターン者

毎年、必ずと言っていいほど受講してくださるのが、地域おこし協力隊のみなさんです。

地域やテーマは様々なのですが、新潟県外の出身者が圧倒的に多いのが特徴です。

同じような想いを持った人と知り合いたい、自分が求めているような講座が見つからないと言った動機で受講される方が多く、移住後のネットワークづくりや協力隊終了後を視野に入れた準備として活用いただいています。

何かのきっかけで移住し、すでに地域に定住しておられる方

結婚、出産や転職、地方暮らしを希望するなどのきっかけで、すでにUIターンされて地域にも溶け込んでおられる方もたくさんおられます。

こちらもネットワークづくりや起業準備などの動機が中心です。

これまでボランティア的に活動してきたので、もう少し資金的に余裕を持って活動したい方、収入面にとどまらずライフスタイル全体を変えていきたいと考えておられる方などもおられます。

必ずしも起業的な側面のみに惹かれての、受講ではないことが分かります。

その他

その他には、新潟県内の出身者で働き方や仕事に関する価値観を変えたい、視野を広げたいと考えておられる方。

定職を持ちつつパラレルキャリアを確立させようと考えておられる方、本業の中の細やかなサービスを磨き上げようとお考えの方など様々です。

今回の移住ブログの趣旨からは外れますので、その他としてご紹介しました。

起業というプロセスから広がる人のつながり

みなさんに伝わりやすいように受講生をカテゴリー分けしてみましたが、本当は十人十色ならぬ100人100色。

それぞれが、自分らしく働くために、どんなことができるだろうかということを、講座の中で少しずつ発見していくんです。

そして、そんな個性的な受講生同士は、お互いの想いを共有し合いながら広がっていきます。

「あ、さんビズのHPに載ってましたね!」「イベント出店してましたね!」

といった具合に、「さんビズ」を合言葉にして、どんどんつながっていきます。

それは、さんビズの心得をしっかり確認してから講座を始めているお陰だと思っています。

みんな同じ想いで受講してきたよね、大事にしているものがあるよね、という共通理解。

どうやら、それが受講生のつながりをスムーズにしているようなのです。

さんビズを通して自分の想いを再確認する

さんビズは、ゆっくりゆっくりとご自身の想いを確認しながら講座を進めます。

その過程は、外から見ているとまどろっこしいのかも知れません。

行ったり来たりして、なかなか本質に踏み込めない方もあります。

やってみたけれども、全く想定通りにいかないで挫折する方もあります。

でも、伴走している講師の自分には、心境の変化やご自身で発見された喜びや驚きが伝わってきて、本当に幸せで楽しい時間なのです。

起業というと、一念発起して生計を立てたり従業員の給料まで支払えるような規模のものがイメージされがちです。

ただ、このさんビズのようなごくごく小さな自分の想いから育てていくようなものに対するニーズも一定数あるんです。

グラデーション豊かな起業の世界への一歩として、さんビズのような形の起業もあるということをぜひ知ってください。

そうすれば、もしかすると少しだけ移住のハードルも下がってくるのかもしれません。

そう感じるのは、さんビズを実践した仲間たちが再会して新しいイベントの企画を立てているときや商品を紹介し合っているときの、あの何とも言えない幸せそうな表情にこれまでたくさん出会っているからなのだと思います。

この記事を書いた人

榎本淳
榎本淳
大阪府出身。長子の誕生をきっかけに、妻の実家がある新潟県長岡市に移住。2015年5月に長子誕生。現在は2男1女の父。長岡市内の公益法人で6年間勤務した後、現在は独立して、起業支援の講座運営、まちづくりや子育て分野のイベント企画、スタッフとして活動しています。仕事と育児を両立させる生活を日々実践しながら、子育てしやすい社会づくりについて考えています。